てつぼう☆戦争(2007.1.27) 双葉は逆上がりが出来ない。これは小学校の頃からそうだった。そして、今も出来ないままだ。 一時、中学時代だっただろうか、双葉が友達と一緒になって特訓していたことがあった。部活後に数人の女子と鉄棒に並んで足を蹴り上げて。まぁ、微笑ましいというか、健気というか、出来る側としては応援してやりたくなる光景だった。 テニス部だった奴はあの頃から人気者で、俺の友達は決まってその練習に参加し、熱心に指導していた。もちろん頼まれてもいないのにでしゃばってだ。 「おへそを空に向けて、足を思いっきり蹴り上げて……」 「え〜出来ないよ〜ねぇ双葉ぁ?」 「〜〜〜っ! ……うぅ、難しいわ。どうしてこんなことが出来るの?」 俺は参加せずにそれらをぼんやりと眺めているだけだった。アドバイスしてもこれは体で覚えていくしかない。教えるのは友達に任せて、俺は見守る方を選んだ。 (俺も昔はああやって練習したよな……補助台とか使って。なかなか出来なくって。双葉はとろいからこのまま出来ないのかな) 双葉の運動神経は悪くない。が、とび抜けていいという訳でもない。ちょっととろい、いや、余所見をして壁にぶち当たったり、何もないところでけつまづいたり。おっちょこちょいとかドジなのかもしれない。 (……そういえば、あいつらなんか普通と違うんだよな。何だろう……?) 練習風景をもう三日続けて見ているが、どうも女子の逆上がりには違和感がある。友達が手本を見せ、彼女達が続く。少しして、俺はやっとその決定的な違いを見付けた。 (ああ、そうか。双葉達は持ち方が順手のままなんだ。……って、アレで逆上がり出来るのか? 難易度高くないか?) あの時、俺は興味本意でいつ気が付くかと放っておいた。その日は俺が気付いただけで、教えていた奴も気付かなかった。次の日も気付かない。そうやっているうちに奴らも諦め、俺も興味が失せて忘れてしまった。そして、今に至ってしまっている。 今、学校帰りの公園で、双葉が数年振りのチャレンジをしている。持ち手はあのまま。そして空振りを続ける。 ……俺は、何食わぬ顔で教えてやるべきだろうか。 ☆ 本日の試合結果。てつぼう勝利。 -レッツ☆ウォーtop- |